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ミュージカル『エリザベート』という世界

 

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『エリザベート』というミュージカルを初めて見たのは2014年の花組公演だった。

全ミュージカルファンが好きなのではないかと思うほどの人気、演者もみながみな口を揃えて出演したいという演目。自分もそのくらい好きになれる作品に出会えるのではないかと期待に胸躍らせながらの初『エリザベート』。

 

あの時も今も、この作品を観た後の感想は変わらない。

 

 

私は、シシィが嫌いだ。

 

 

 

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月エリザ観られなかったから、ずっと楽しみにしてたちゃぴシシィでした~!

ちゃぴの演技がやっぱり好き。最初に出てきた時は間違いなく子どもで、まだ少女なのに、3時間の間にどんどんどんどん大人になっていく。時に美しい大人のエリザベートで、時に子どものままのようなシシィ。なんとなくシシィっていつも何かに怯えているようなイメージだったけど、ちゃぴのシシィは常に目の前のことにまっすぐで一つ一つに向き合っている感じがした。フランツとの結婚も、ゾフィーとの確執も、ルドルフとの関係も、そしてトートとの対峙も。

歌が上手い。ちゃぴの声が好き。

一幕ラストのシシィとトートとフランツの三重奏のところ、最後の止めの部分でシシィが手に持っていた扇子をぱっと広げるんだけどそれがもう美しくてかっこよくて…!「私だけに」も本当に素敵だった。ゾクゾクした。鏡の間のエリザベートはもう美しさが圧巻すぎた。私がフランツだったら一回一回恋に落ちちゃう。

 

古川さんは相変わらずお顔が良い。あと歌が上手い。結論、歌が上手くて顔が良い。えっそれはもう恋。

一階最後列の通路側だったんだけど、一幕の途中で急に隣の通路をフラッっと歩いて行く人がいて、遅れてきた人なのかと思って「えっあの人なんか雰囲気やばくない??なんでお姉さん止めないんだろう」って考えてたらトートでした。舞台の光に向かって歩いて行く背中のシルエットがもう本当に儚くて線が細くて、あれはトートだった。「死」だった。歩き方だけで「死」だと思わせる。この世の者じゃないと思わせる力。

とりあえず古川トートは基本的に頭がおかしい(褒めてます)なんかほぼずっと目見開いてるし、半笑いだし、急に爆笑するし、頭おかしい~~~~~~~!って感じだった。褒めてます!だいたいあの最初の時点で子どものシシィに恋する時点でただのロリコンでは?って思うんですけど、それもちゃぴが上手いからですね。シシィがトートを拒絶する度に「なん…だと……」みたいなびっくりしたお顔してるのが面白くて笑っていた。俺を振るとは……?みたいな。褒めてるんです。トートなのに生身の人間みたいというか、結局トートが一番人間らしい感情の動きを見せる。ただただただシシィのことが好きで、それだけで、同じように愛してほしくて、自分のものにしたくて。ストーカーかな?

「愛と死の輪舞」って宝塚版だけかと思ってたんだけど東宝版でも歌うんだね。古川さんの歌本当によかったな。単純に「死」の役割としてシシィのもとへ訪れたのに、シシィを見た瞬間そのまま動きを止めてしまった最初の出会いの場面が印象的だった。ああ人(人じゃないけど)ってこうやって恋に落ちるんだ。今トートは恋に落ちたんだって腑に落ちた。恋はするものじゃなくて落ちるものだと誰かが言ったっけなんて。

トートが好きって思うの初めてかも!

 

成河さんは歌が上手すぎでは????????っていうルキーニ。頭の狂ったルキーニ。「ウングランデアモーレ」がめちゃくちゃ巻き舌で「ウン!グルルァァアンデ!アンモーーーーーリェェエエエエ!!」って感じだった。すき。

シシィの暗殺前、フランツとトートが争うのを舞台際の階段に座りながらぼーっと興味なさそうに見ていた。なのにその後トートがシシィを殺す許可を出してナイフを渡そうとした途端、駆け寄って狂わんばかりにそのナイフを求めるルキーニは本当に頭がおかしかった。ルキーニってストーリーテラーの役目があるから、なんとなくシシィの味方(上手く言えないけどこっち側というか)なのかなって、話が進むうちにいつの間にか錯覚してしまうんだけど、ナイフを舐めるように見つめるルキーニを見て現実に戻される。所詮誰でもいいから殺したかっただけの頭のおかしい男よ。

 

初めて観た時からずっとフランツが好きで、あんなふうにフランツに愛されるならもうなんか別にどうでもよくないか?って思う。特に好きなのは霧矢さんのフランツです♡

優しくて弱くて残酷な男。シシィのことが好きで離れていたくなんかないのに、母親のことは突き放せなくて、だからこそシシィへの愛も身勝手のように見える男。いわゆる「人間の男」って感じのフランツ。でも皇帝としてのプライドはあるし、その身分であることの義務も受け入れているし、良い男だよ。皇帝であるフランツにできることはあれ以上にないと思う。

いつ観ても「夜のボート」の場面でこのままシシィがフランツのことを理解してあげて全て丸く収まればいいのに…て期待してしまう。フランツ不憫すぎて涙出るわ。

 

涼風さんのゾフィーめちゃくちゃ好きだった~~~~~!ゾフィーはゾフィーなりに皇室でプライドを持って一貫して生きてきたからこそのシシィに対する仕打ちなんだよね。それはもはや思いやりでは?

 

新婚初夜明けのベッドをバサッと(行為したかの)確認のためにめくったり、シシィが運動のしすぎで倒れるんじゃなくて普通に性病だったり、宝塚ってすみれコードに守られまくってるんだなって思いました。びっくりしたわ。布団めくるのえげつない。

「夜のボート」の場面は宝塚版の演出の方が好き。すれ違いを歌うシシィとフランツのところに仲睦まじい老夫婦が来て、引き立て合うあの演出が胸しめつけられるから。

 

 

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ちゃぴの演技が好きで、特に『1789』でのちゃぴがそれはそれは美しくて気高くてプライドのあるアントワネットだったから、もしかしたらちゃぴのシシィを見たら好きになってしまうのかもと期待と不安が混じっていた。

 

ちゃぴが演じても、やっぱりシシィが嫌いだった。もはや安心する。私はシシィが嫌いだという事実に。

 

共感できるところが一つもない。「自由に生きたい」「何にも縛られたくない」「私の命をゆだねるのは私だけに」彼女の信念だけ抜き取れば、それはもちろん理解できる。当たり前のことだ。

ただこれらは全て現代の価値観で考えた場合のことだ。私だって雅子様がそうおっしゃれば、それはそうだと頷く。当然だと思う。だけどシシィは時代も、生まれた世界も違う。皇室と繋がることのできる家に生まれ、見初められ、嫁いだのに、義務を一つも果たさずに自由だけ求めるのはただのエゴだ。プライドのない女。息子さえ見捨てる。みんな本当に心からこの話が好きなのかな?本当に?どこに共感するの?聞いて回りたい。

あまりに有名で人気があるから、演者も観客も『エリザベート』に対して背負うものが大きすぎるような気がする。自由な演技をするのが少し難しいのではないかと。

 

日本で初めて上演する時、「死」というのは日本人には分かりにくいから「黄泉の帝王トート閣下」とすることにしたというエピソードをどこかで読んだ記憶がある。確かに「死」がシシィを愛し、シシィも「死」を愛したというのは少し理解しがたいかもしれない。

でも、人間が時に「死」に惹かれるのはいつの世界でもある意味で当然のことであるし、「死」というのはたまに甘美でさえある。個人的には「トート閣下」と「エリザベート」の恋というよりは、「死」に惹かれ続けた女性の物語として解釈する方が好みだ。少なくとも私が今日見たトートは「死」であった。

 

なんとなく、キリスト教的な価値観がないと本当の意味で理解することは難しい作品なのではないかと思う。

 

なぜ私はいろいろと言いながら『エリザベート』を観たいと思うのだろう。いつも答えを探している。人がこの作品を好きだと言う答えを。シシィの魅力の答えを。「死」に惹かれる人間の答えを。

 

『エリザベート』にはとにかく希望がないのだ。私がもうこれ以上のミュージカルには出会えないと思うくらい好きな『1789』は、結末がどうであれ、終始希望に満ち溢れている。一生懸命生きていくのだという光。『エリザベート』にはそれがない。暗く、ただ一つの結末である「死」に向かっている。

 

それでもシシィが、ずっと「死」に抵抗し続けていた彼女が、「死」を受け入れ、「死」を愛する最後の瞬間があまりにも美しいから、また観に行くのだろうと思う。あそこに何か答えがある気がするのだ。私をもやもやさせるものの正体が。

結局私も、この作品に魅了されているということなのだろう。

 

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自慢させてください!!

 

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なんか会場着いたら座席番号貼り出されて当たってた♡え~~~~~嬉しい家宝にします…。帰ってからずっとにまにま見てる。パンフ代浮いた分でグッズ買っちゃった♡

 

イープラス貸切公演だったから最後の挨拶で古川さんが腕をクロスさせてイープラスポーズしてた。かわいい。しゅき。ちゃぴがそれを受けてポーズ真似しながら「今日の観劇が皆さまにとっていー!ことがプラス!されたなと思えるものであるように…」みたいなことを話したんだけど、だじゃれを言うちゃぴを「なんやこいつw」みたいな顔しながら見てた古川さんわろた。2人かわいい。結婚しろ!(暴言)

ああでもちゃぴはもう挨拶していいんだって思った。間違いなく主役なんだ。娘役さんだった方が堂々とタイトルロール演じてるのって涙出ちゃうな。感慨深くて。

 

やっぱりミュージカルすき!いろいろ言ったけど『エリザベート』は本当に楽曲が素晴らしい。このミュージカルとこの曲を作ったミヒャエル・クンツェとシルベスター・リーヴァイの組み合わせ…と言えばもう私が次に言いたいことは分かると思うんですけど、同じ2人が作ったミュージカル『マリー・アントワネット』にミニョンが出ます!!!!!!!!!アイドルの推しがミュージカルに出る日!!!!!!!!!!!!もうオタクやめてもいいです!!!!!!!!!おわり!!!!!!!!!